
比較するのは月額料金だけでなく、初期費用、契約期間中の利用料、機器・保守、管理者の作業、議事録の確認作業を合わせた総費用です。以下の金額は製品価格ではなく、計算手順を示す架空の例です。
費用の前に、端末型か共用サーバー型かを決める
担当者が限られ、会議後に録音ファイルを処理するなら、PC上で動く構成が候補です。複数部署が同時に使う、端末に音声を残したくない、管理を集約したい場合は共用サーバー型を検討します。オンプレミスだから必ず高額なサーバーが必要、あるいは既存PCで必ず足りる、という両方の思い込みを外します。
SecureMemoはスタンドアロン型やクライアントサーバー型などを案内しています。ScribeAssistはPCに導入する方式を案内し、ローカルとクラウドの要約を区別しています。まず対象の製品と構成を固定し、必要スペックと利用上限を確認してください。別構成の価格を並べても適切な比較にはなりません。
例えば10部署が毎週月曜の朝に会議を終えるなら、月間の合計音声時間が少なくても処理が集中します。「月100時間」だけでなく、「同時に何本投入され、何時までに必要か」を示します。処理を翌朝まで待てる会議と、終了30分後に配布する会議を分ければ、必要な設備を調整しやすくなります。
見積書を8つの費目に分ける
製品によってライセンス方式や保守の含まれ方は異なります。下表は各社共通の料金表ではなく、見積もりを依頼するときの項目表です。不要な項目はゼロとし、基本料金に含まれる項目を二重に加算しないようにします。
特に見落としやすいのは、社内ネットワークへの接続設定、バックアップ、セキュリティ審査への回答、導入後の端末入れ替えです。販売会社に依頼する作業と、情シスが担う作業を分け、後者も工数として記録します。予算支出がなくても、担当者の作業時間は運用負担として残ります。
| 費目 | 含める内容 | 確認すること |
|---|---|---|
| 機器 | PC・サーバー・GPU・保存装置 | 購入か流用か、必要スペック、更新年数 |
| ライセンス | 認識・要約・同時利用・管理機能 | 人数、台数、同時接続のどれで課金するか |
| 構築 | 設置・設定・接続試験 | 既存認証・プロキシ・バックアップとの接続 |
| 教育 | 操作研修・管理者引き継ぎ | マニュアルと初回研修の対象人数 |
| 保守 | 障害対応・更新・問い合わせ | 対応時間、作業範囲、更新費用 |
| 基盤運用 | 電力・保存容量・監視 | 設備費に含む分を重複計上しない |
| 社内管理 | 追加利用者の登録・権限管理 | 月あたりの管理者作業時間 |
| 確認・修正 | 要約の点検・固有名詞の修正 | 会議1件の実作業時間 |
3年TCOを計算する:架空条件の例
TCOは一定期間にかかる費用の合計です。ここでは月額と同じ単位で比較できるよう、初期費用を契約月数で割ります。実際の会計処理や減価償却を示す計算ではありません。利用開始時に必要な予算と、期間全体での費用は別に確認します。
架空の構成として、機器60万円、初期設定30万円、継続費用はライセンス・保守を合わせ月5万円、社内管理は月4時間で時間単価3,000円とします。月の継続費用は62,000円、36か月で223万2,000円。初期90万円を足すと3年TCOは313万2,000円で、月換算87,000円です。価格相場や特定製品の見積額を表す例ではありません。
クラウドを比較対象に残せる場合も、同じ保存期間、利用人数、音声時間、管理機能を揃えて計算します。オンプレミス側だけ保守を含めたり、クラウド側の時間超過や追加管理機能を除いたりすると、安く見える方向へ結果が偏ります。セキュリティ要件でクラウドを利用できない会議では、価格差だけで代替できません。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 機器60万円+設定30万円 | 900,000円 |
| 利用料・保守 | 50,000円×36か月 | 1,800,000円 |
| 社内管理 | 4時間×3,000円×36か月 | 432,000円 |
| 3年合計 | 初期+利用料・保守+管理 | 3,132,000円 |
| 月換算 | 3,132,000円÷36か月 | 87,000円 |
作業削減で回収できるか:月60件の例
現在、会議後の議事録作成に1件45分、導入後の確認に15分かかると仮定します。削減は1件30分です。月60件なら30時間で、時間単価3,000円では月90,000円相当になります。前節の月換算87,000円との差は月3,000円相当です。これは人件費換算上の差であり、給与の現金支出が同額減る意味ではありません。
回収の目安となる件数は、月換算費用を1件あたりの削減額で割って計算できます。この例では87,000÷1,500で月58件です。月30件しか対象がないなら、削減額は45,000円相当となり、工数だけでは費用を上回りません。導入対象を広げられるか、設備構成を軽くできるかを再検討します。
導入後の確認時間が25分残ると、削減は1件20分に縮みます。月60件では60,000円相当で、同じ構成でも結果は変わります。認識精度の公表値を時短率として計算せず、自社の会議で編集と承認にかかる時間を測る必要があります。
自社の条件で費用と回収件数を試算する
初期値は本文と同じ架空条件です。見積額と実測値へ置き換えてください。金額は税込・税抜のどちらかに揃えます。借入費用、税効果、機器の残存価値は含みません。
音声時間と処理能力を見積もりへ落とす
1時間の音声が何分で処理できるかは、認識、話者識別、要約、出力で異なり、機器やモデルにも依存します。ベンダーに自社構成での実測または目安を依頼し、同時投入した場合の待ち行列を確認します。要約を何度も作り直す使い方なら、その再実行も利用量に入れます。
例えば1件の全処理が30分で、同時処理が1本の構成に6本を投入すると、単純な直列モデルでは最後の完了まで3時間です。これは製品の実測値ではなく、集中時の確認が必要な理由を示す例です。並列実行時の性能は単純に台数倍になるとは限らないため、繁忙時の入力条件で検証します。
保存容量は録音だけでなく、バックアップの世代数、一時ファイル、ログ、モデルの更新領域を含めます。例えば音声1時間を100MBと仮置きし、月100時間、12か月保存なら元音声だけで120GBです。バックアップを追加すればさらに増えます。実際の容量は音声形式から測り直し、保持期間を決めてから必要量を出します。
- 01会議数・集中時間
月の件数と最大同時投入数を記録
- 02機器条件で試す
実際の音声で認識から出力まで計測
- 03予算を確定
処理待ちと保持容量を見積もりに反映
利用量が半分、確認時間が増える場合も計算する
予算の説明には、予定どおりのケースに加えて、利用量が少ないケースを置きます。月換算87,000円という前提を固定し、月30件・60件・90件で、1件30分削減できる場合を比較すると、削減工数の金額換算は45,000円・90,000円・135,000円です。差額はマイナス42,000円・プラス3,000円・プラス48,000円相当となり、同じ契約でも対象件数の違いで評価が変わります。
次に、確認時間を変えます。月60件で、導入前45分に対し導入後25分なら削減は20時間で60,000円相当です。導入後35分なら10時間で30,000円相当です。保存や統制の必要性から採用する価値は別に判断できますが、作業削減だけで回収する説明には無理があります。稟議には、効果の前提が崩れたときの縮小・構成変更の選択肢も示します。
繁忙期だけ対象が増える組織では、最高の利用月を12倍しないでください。月別の対象件数を並べ、年間合計から計算します。担当者が長期休暇を取る時期、年度末だけ処理が増える部署、トライアル期間だけ熱心に使う状態なども、利用率の確認材料になります。
翌年度に残る費用と、終了時の費用を分ける
初年度の支出を次年度もそのまま計上する必要があるとは限りません。機器を購入する場合、2年目に同じ購入費は発生しなくても、保守、利用料、追加ストレージ、管理者の作業は継続します。反対に年払いの値引きや初年度割引がある場合は、更新年度に金額が上がる可能性を見積書で確認します。
機器故障の対策では、修理費だけでなく処理を止める時間を見ます。代替端末で使えるまでの手順、ライセンス移行、保存済みファイルの復元を確認し、必要なら予備機や復旧作業を計上します。二重構成が必須かは業務の締切で決め、すべての会議を無停止にする前提で設備を過剰に増やさないことも重要です。
契約終了時には、データの取り出し、保存形式の変換、端末からの削除、別製品への移行に作業が発生します。書き出した議事録を契約なしでも読めるか、音声との対応が維持されるかを試します。短期間だけ使う予定なら、導入時と終了時の両方の手間を含めて比較すると、月額料金の安さだけでは見えない違いが分かります。
そのまま見積もり依頼に使える条件票
依頼文には「対象は社内会議、月60件、1件60分、利用者30名、最大同時投入3本、音声と文字起こしの外部送信は禁止、音声は90日保存、議事録は社内ファイルサーバーへ出力」と記載します。そのうえで、推奨構成、最低構成、各構成の処理時間、初期費用、年額費用、更新費用を分けた回答を依頼します。
「オフライン環境へインストールする際の認証方法」「障害時にログを社外へ渡す必要があるか」「セキュリティ更新の提供方法」「端末故障時のライセンス移行」「契約終了後に出力済みファイルを読めるか」も回答欄を用意します。稼働後に初めて分かると、想定外の外部通信や復旧作業が発生しかねません。
稟議には、初期支出、月の継続支出、社内作業、人件費換算の効果を別々に示します。実機検証で数字が変わる項目は仮定と明記し、見積書の有効期限と評価条件を添えます。最も安い構成ではなく、必要な締切と管理条件を満たす構成を採用候補にしてください。
ライセンスの数え方も条件票へ書きます。登録利用者が30人でも、同時に操作する担当者が3人、閲覧だけの利用者が27人なら、30人分の作成機能が必要とは限りません。ただし同時接続課金や閲覧者の扱いは製品ごとに違うため、勝手に3ライセンス分へ換算せず、各社の見積もりで確認します。管理者、承認者、予備端末、テスト環境が追加契約になるかを明らかにすると、導入後に人数分の費用が膨らむのを防ぎやすくなります。
よくある質問
オンプレミスAI議事録はいくらで導入できますか?
一律の相場額では決められません。端末型か共用型か、必要性能、同時利用数、要約方式、保守範囲で費用が変わります。本ページの金額は計算方法を示す仮定であり、販売価格ではありません。
GPUサーバーは必須ですか?
製品と構成によります。PCで利用する製品・構成もあります。音声認識とローカル要約それぞれについて、推奨性能と自社の処理量を確認してから機器を決めます。
削減時間をそのままコスト削減額にしてよいですか?
時間単価を掛けた値は工数の金額換算です。残業や外注費が実際に減る額とは分けて扱います。浮いた時間をどの業務へ振り向けるかも予算説明に含めます。
まとめ
予算化に必要なのは、構成を決める条件票と、初期・継続・社内工数を分けた見積もりです。対象会議数と導入後の確認時間を実測し、少ない利用量や修正が多い場合も計算しておくと、楽観的な試算だけで決裁することを避けられます。
参照した公式情報
2026年10月20日確認。仕様・提供条件は変更されるため、契約時には対象プランと構成を確認してください。手順例・試算例は編集部が作成したもので、導入実績や実測結果ではありません。